2018 / 06
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そもそも、僕は即興演奏を、そうでないあらかじめ作られたもの

(楽譜に書かれているとは限らない)に比べて、特別視するのは

あまり好まない。


演奏会の場で、お客さんを前に「次の曲は即興演奏でお送りしま

す」というMCを時々耳にするけれど、これって「ワシら、けーか

らするんはソッキョーじゃけん。耳ーかっぽじってよー聴けーよ

ー。そやかて、うもー行かんとこがあっても大目に見てつかーさ

いよ」という思いが言下に聞きとれることが多い。(もちろん、

全部とは言わないが)


あ、もうひとつあった!即興演奏の技術自慢だ。


これは音楽家の方からみれば、大いに異論があるところだと思わ

れるが、聴く側からすれば、そんなことどうでもいいことだ。

練りに練った曲であろうが、たった今湧き出て来た音だろうが、

要は面白いかどうか?だけだ、と思っている。

ちょっと、あまりに乱暴な物言いに聴こえるかもしれないが、音

楽家は黙って勝負すべきだ。また、そうしたい。


このことを考える意味で、例えばこんな例はどうだろう。

ジャズピアニストのキース・ジャレットの記念碑的作品『ケルン

コンサート」

これは、収録された曲には特に題名が付けられていなくて、ただ

無機的に作品番号がふられているのみだ。

そして、有名な話であるが、ここに収録された曲は全て、まっさ

らな状態でピアノの前に座って、一瞬の静寂の後、天から降りて

きたかのように紡ぎだしたものだという。


ただ、誤解のないようにしておきたいが、彼はあえて、このコン

サートは即興で弾きます、とわざわざ宣言をしていたのではない

のだ。(と信じたい)

たしか、日本の、あるジャず評論家の事後のインタビューでそう

答えたのだと記憶している。

そして、評論家は、あのような音楽が全く白紙の状態でステージ

に出てきて弾けるものか!と食ってかかった。(その場でかどう

かは定かではないが)

人が何かをしゃべろうとする時でさえ、あらかじめ数秒前(とい

う表現だったかな?)には考えているものだ。と反論したという。

これは当時、そうとう物議をかもした。


彼の持論でいけば、数分前、数秒前にあらかじめ考えて

(音楽で言えば作曲)していたものは即興演奏とは言わない、と

いうことなのか。

あんなに流麗で美しい音楽が、自宅はもちろん、バックステージ

でさえ頭に浮かんで来てはいなかったなんて信じられない。

絶対ウソだ! と、これでは彼を褒めているんだか批判している

んだかわけがわからない(笑)


でも、待てよ。いみじくも件の評論家が持ち出した時間の概念。

考えるヒントを与えてくれる。


ひと月前に出来た曲ならば、もちろん即興とはいわないだろう。

5分前でもたぶんそう。では1分前ならば? 5秒前ならば?

こうなってくると、即興の“即”の表す意味が曖昧模糊として来

る。


現代のクラシック音楽には即興演奏がない、と言われているが、

教会音楽を勉強するオルガン科ではいまでも、即興演奏のカリキ

ュラムがあるそうだ。教師が、あるモチーフ(‘動機’といった

りする。‘動悸’じゃありません)を与えて、それを聴いて記憶

した生徒が、それを受けて曲に紡いでいくのだ。


その場合、生徒が「ちょっと待って下さい。お昼を食べて来たい

んですが。」と言って回答を先延ばししたら、それはもはや即興

演奏とは見なされないのだろうか? では、トイレくらいならば

許されるのか? 

たぶん、先ほど説明したように、他人が提示したテーマをもとに、

直し直ししながらでなく、一発勝負で曲に仕上げていく技術のこ

とをいっているのだと思う。

必要とされるのは、次の瞬間に奏でられるべき音や、その音の連

なりによって形作られるフレーズ、和声、はたまた全体の構成に

至るまで素早く考え(取捨選択)ながら演奏する高い演算能力と

瞬発力だ。


ここまで考えてくると、即興演奏と、さも特別視されているもの

は、一般的な作曲となんら変わることはないのだと思う。

‘じっくり’やるか‘サクサク’っとやるかの違いに見えてきた。


それはすごいことではあるけれど、それらはすべて、たゆまぬ訓

練によってのみ獲得されるもの。あまり神がどうの、とか、天か

ら降りて来る云々は言ってほしくはないものである。(暗算の達

人は自己の能力を語るとき、決して神が云々なんていわないでし

ょう。技能と芸術の差こそあれ)

もしそうであるなら、神に帰依する神主さんや神父様(なぜ神父

は‘さん’でなく‘さま’?)は皆、優れた即興演奏家でもいい

はずではないか!


キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』は大好きではある

が、神が云々はどうもね~。


でも待てよ。本当にそのように考えていたのかな?


著名な登山家が、なぜ、あなたは山に登るのか?という問いに

「そこに山があるからだ」と答えた話はあまりに有名だが、これ

にはウラがあって、実は、登山家が講演会で山登りの素晴らしさ

について、とうとうと述べたのにも関わらず、山登りの経験のな

いその記者にはうまく伝わらなかったそうで、「ところで、そん

な辛い思いをしてまであなたはなぜ登るのですか?」というニュ

アンスで尋ねたものだったらしい。


登山家にしてみたら、ここまで延々話してきたのに、なぜわから

ない!?と腹を立てるわな。

あの有名なことばは、半ば投げやりに答えたものだったのだそう

だ。


ひょっとしたらキースもそうだったんじゃないか? 

きっと、分からず屋の評論家だったのかも知れない。

(日本では巨匠扱いされている評論家ですけどね)


四の五の言わず音楽は黙って聴けってことですかい?キースさ

ん。



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【】
おはようございます。

キース・ジャレットも知らない人がいるなんて
たぶんジャッキーさんには超ビックリでしょうけど
はい。 それは私です。

こんなのを即興で?
と思いつつ ジャッキーさんのお話を読んで
物事って一面からだけ見てることが多いんだなと
実感しました。
ほんとに即興? じゃなくて 即興ってなに?
まで掘り下げるなんて… すごい。

なんか朝から 面白いセミナー受けた感でいっぱいです。
ありがとーございました!
【即興】
そう、5分前だと即興じゃないと思うけど、直前はチラっと考えている気がしますね。
先日、セミナーでリトミックをしたとき、1つのモノを何かに見立ててある動きをしたら、別の人がそれに合わせた即興演奏をピアノでする、ということをしました。これだと相手の動きに合わせていくので、考える暇はないのですが、それでも今までの自分の経験や技術の中から、フレーズやリズムやコードやニュアンスをつむぎ出していくわけです。即興と言いながらも、その背景には、いろいろな貯金がないと難しく、共感は得られず、共感してもらわないと、即興として成功ではないのですね。
いい即興に出会えたときは、とても気持ちいいです。予め知っていた曲では味わえない共感がありますね。
【】
雨さん

コメントありがとうございます。
このアルバムに収められた全曲を採譜して出版したいと持ちかけたのは日本人でした。キースは、これは一夜限りの音楽であって、楽譜として世に出すことは自分の本意ではないと、かなりしぶとく同意しなかったそうですが、あまりに熱心に食い下がるので、採譜したものを自分が確認した上でなら許可しよう、となったのです。

僕はこの楽譜を手に入れましたが、あくまで、弾くことが前提ではなくて、これを採譜した人の執念を見てみたいという好奇心からでした。

【】
ト音記号さん

コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、相手が音楽でないもの(例えばダンス、朗読)に相対する場面で、即興演奏は俄然威力を発揮しますね。それに応じて、向こうもインスパイアしてくれて、より熱くなってもらえると、やってよかったなと思える瞬間です。
目指せ3割! 低ーい(笑)
【】
即興、アドリブ・・・今のワタクシにはとてもムリなお話ですわ~っ!
キースはパパが好きでCD聴いたことがあるわ♪

あのね、事情があってblog変えましたの。
中身は何にもかわっていないんだけれどね(笑)
【】
ライブハウスでジャズを聴く時、即興演奏は当たり前。
なのに、たまにテレビで放送するとき、司会者がもったいぶって
「今の曲、とても即興演奏とはおもえませんね」
「即興なのに息がぴったり合ってますね」
などと言ったりしますよね。
(特にお昼の番組とかで)
あれ、わざとらしいなあ~、と思ってました。
即興と言ってもジャズバンドの場合はコード進行とか決まっているし、テレビ用に準備してるだろうし、ズレるわけねーだろ、とツッコミ入れたりしたくなります。
(多少ズレたってうまくごまかせるからプロなんだろうし)
即興じゃなくてもぜんぜん息が合ってない私なんかホントは何にも言えませんが(笑)

キース・ジャレットさんはすごーく昔一度コンサート行ったことあります。
ほぼ全曲即興演奏・・・ということは全曲初めて聴く曲。
聴く側にも相当の「耳」がないと楽しめないという気がしました。

キース・ジャレットは全くの白紙から音を紡ぎだしていくのかもしれませんが、あるモチーフが最初にあってそれを発展させて行く・・というのは編曲の技術ですよね。
自分の中にたくさんのメロディやリズムの貯金がないとできなそうです。
それを一瞬で考えるなんてスゴイ。
私は昼休みぐらいじゃムリですな。
1週間の休暇をもらわないと。
【】
歌姫LUNAさん

コメントありがとうございます。
新装開店おめでとうございます!
ホントは前のタイトル気に入っていたんですけどね。
ま、作風が変わらずならいいとするか。(ナニ様じゃい!)
【】
yamanokanataさん

楽譜どおりにきちっと出来ないからアドリブに逃げる、ということ(ひと)もあるでしょうね。
だからといって、音楽のクオリティーを落としてはいけないわけで・・・。
どちらが易しいというのではなくて、どちらも難しいですよね。
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ジャッキー

Author:ジャッキー
★マルチでありたいミュージシャン

フラメンコギターでの舞踊伴奏をするうちに、何の因果か各種パーカッション(ただしラテンはやりません)にもてあそばれる。

あがた森魚のサポート多数。
コンテンポラリーダンスグループ《まことクラヴ》では音楽・演奏担当。
FM局の音楽番組サウンド・オブ・ラテンアメリカのフラメンコの回《ムシカ・デル・ス-ル》では番組消滅までパーソナリティーを務めていた。
スペイン人ミュージシャン達にジャッキー・○ェンに似ている(?)と言われ、以来「ジャッキー」の名で音楽活動を続けている。
バレエ、演劇、語りの音楽なども。
いやはや。

でも、本業はピアノ調律師。

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